このたび第21回日本Awake Surgery学会を2023年7月15日(土)に金沢市アートホールにて開催いたします。第20回で成田善孝 会長がこれまでの本学会のまとめと検証をされました。今回、これを踏まえて新たな出発となります。
主題は「AWAKE未来知」といたしました。参会される先生方がAwake Surgeryから創出し未来を彩る知見を議論する場になればと思います。
ポスターはAwake Surgeryのこれまでとこれからを表しています。背景は脳回と脳溝から成る脳表面と、皮質下の白質神経線維です。双極電極を持った術者が電気刺激をすることで、脳の未開拓領域に光が差し、青空が広がるイメージです。浮かび上がった青空は、一般的にAwake Surgeryの適応となる左脳を示しています。そこには、Awake Surgeryの進歩につながる新知見のみならず、神秘の脳に迫る脳科学知見を含めた「未来知」が広がっています。雲がかかっていないのは、一次領野である運動・感覚・視覚野とシルビウス裂周囲の言語領域で標準的にマッピングする領域です。雲がかかっているのは、いまだ機能局在がよくわかっていない連合野です。晴れ渡る青空にするべく、術者はそこに電極を当てます。
今回は学会前日に、初の試みとして大脳白質解剖ワークショップを企画しています。希望者を募り、金沢大学宝町キャンパス(医学部解剖実習室)で自らの手で白質解剖を行い白質神経線維の理解を深めていただきます。白質解剖をガイドする講師は、白質解剖歴50年の篠原治道 解剖学名誉教授です。夕方にはモンペリエ大学のProf. Hugues Duffauより白質神経線維についての教育講演を予定しています。
学会当日午前には、例年通り施設認定講習会、ランチョンセミナーとしてProf. DuffauよりAwake Surgeryから得られた脳機能ネットワークの最新知見をお話しいただきます。特別講演として富山大学 井ノ口 馨 卓越教授(アイドリング脳科学研究センター長、医学部生化学講座 教授)に覚醒していない間も脳が働いている「アイドリング脳」についての特別講演をお願いいたしました。また、未来知につながる挑戦的な公募演題からシンポジウムを組みたいと考えています。
私は本会に黎明期から参加して参りました。初期には手術の方法も適応も手探りで、症例報告に喧々諤々の議論が行われました。新しい学問の勃興に見る独特の活気を感じました。現在はまとまった症例の解析や新たな試みも多く、蓄積されたエビデンスを背景とした理論的な検討が行われるようになりました。20回の学会を経て、学会としても円熟期に入った印象です。Awake Surgeryはmaximal safe resectionを叶える有用な手術法です。また、脳局所電気刺激により脳機能局在を知る手法は、本手術関係者しか取得できない独自性の高い知見を生み出し、脳科学研究の進歩にも寄与します。参会される様々な分野の医療従事者・研究者の連携により、今後本会はさらに発展するでしょう。
多くの方々にご参会いただき、活発な議論を期待いたします。何卒よろしくお願い申し上げます。