トップへ
第23回東海北陸作業療法学会・第32回石川県作業療法学会

ご挨拶

 令和6年能登半島地震により犠牲となられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。皆様の生活が一日も早く復旧し、日常が取り戻されることをお祈り申し上げます。
 このたび、日本精神保健看護学会第35回学術集会・総会を「こころのケアのユニバーサル化と安心の考究」をテーマに、2025年5月31日(土)・6月1日(日)の両日にわたって石川県金沢市で開催させていただくことになりました。
 日本精神保健看護学会は、精神保健看護に関する学術団体として国内最大規模の学会で、学術の発展ならびに人々のメンタルヘルスへの貢献を目的としております。学術集会では、例年全国の臨床やコミュニティの最前線で活躍されている看護職や保健福祉職、精神保健看護学関連の教育・研究者を中心に1,000名以上の方が参加されています。

 1995年に阪神・淡路大震災が発生してから、日本でも心的外傷後ストレスとこころのケアが着目されるようになってきました。その後も、東日本大震災や熊本地震、豪雨災害、火山災害などの自然災害や事件・事故が繰り返し発生しています。石川県能登地区では、2007年の震災後ようやく安心が取り戻されてきた中で、2024年1月、再び甚大な被害を受けています。世界的には、感染症のパンデミック、人道災害の発生、温室効果ガス問題、貧困と食糧難などによって、人類は安全と安心が脅かされた不確かな時代に生きることを余儀なくされています。
 このように日常性が失われた状況の中で、安心や平和の真価が再認識され、意味が問われてきたように思います。誰もが心的外傷をもちうる中で、すべての人がこころのケアを通して安心を実感できる社会が必要とされています。また、同時にトラウマから回復する力やメンタルヘルスリテラシーが着目されるようになってきました。2020年以降、学校でメンタルヘルスリテラシー教育が始まっており、日本においても社会全体でメンタルヘルスへの関心が高まっています。メンタルヘルスリテラシーは、保健・医療・福祉機関のみならず、コミュニティ・学校・産業など人間が生きるあらゆる状況で必要とされ、浸透しつつあります。グローバル化、情報・テクノロジーの飛躍的な進歩、日本学術会議によるケアサイエンスの推進の中で、専門職のみならず市民や行政・産業・異分野の科学者たちが立場や民族・制度などの垣根を越えて協働することが求められています。メンタルヘルスリテラシーの向上が、時間と空間を超えて様々な人や場をつなぎ、こころのケアのユニバーサル化と人々の安心に貢献すると信じています。

 金沢市は、加賀藩前田家の城下町として発展し、伝統工芸や芸能が引き継がれてきた一方で、21世紀美術館や海みらい図書館など新しい文化も存在し、世界からユネスコ創造都市として認定されています。地域の伝統と世界に開かれた金沢のまちで、こころのケアのユニバーサル化と安心を考究し、ケアマインドの活性化と共生社会の実現に向けて考える機会にしたいと考えております。
 ぜひ多くの皆様にご参加いただき、様々な交流とディスカッションができますと幸いです。ご参加を楽しみにお待ちしております。

東川 哲朗

日本精神保健看護学会第35回学術集会・総会

会長田中 浩二
(金沢大学医薬保健研究域保健学系)