会長挨拶
第34回日本シェーグレン病学会学術集会
会長正木 康史
金沢医科大学 血液免疫内科学
2023年に国際コンセンサスにより、病名が「シェーグレン症候群」から「シェーグレン病」へ、また「二次性シェーグレン症候群」が「関連シェーグレン病」へと変更されました。本邦においてもこれに倣い、病名の修正が行われています。長年親しまれてきた名称が改められたことは大きな変化ですが、それ以上に注目すべきは、治療法の進歩が新たなトピックスとなりつつある点です。
シェーグレン病の治療は、これまで長らく対症療法が中心でした。グルココルチコイドを含む免疫抑制療法は臓器病変に対してのみ適応とされ、シェーグレン病の主症状である乾燥には効果が乏しい、あるいは適応外とされてきました。関節リウマチや全身性エリテマトーデスでは、生物学的製剤や低分子化合物(キナーゼ阻害薬など)が著しい治療効果を示していますが、シェーグレン病では有効性が示されていませんでした。しかし近年になり、有効性が強く期待される複数の薬剤が登場し、現在治験が進行しています。
もう一つのテーマであるIgG4関連疾患は、2001年の最初の報告以来、中等量のグルココルチコイドが第一選択薬とされ、再発・再燃時の治療法は確立していませんでした。ところが最近になり、イネビリズマブ(抗CD19モノクローナル抗体)が新たに保険適用を取得しました。さらに複数の新薬についても治験が進行中です。
これまで診断はできても、十分な治療を提供できなかったこれら二つの疾患に対し、今まさに「パラダイムシフト」ともいえる転換期が訪れています。そこで本学術集会では、「新たな治療戦略の見えてきた時代に」をテーマに掲げ、各領域における診断・治療・研究の最先端について議論を深めていただきたいと考えています。唾液腺エコーのハンズオンセミナーやクイズ大会など、若手参加者にも有意義で楽しめる企画も用意しています。また、患者会との連携による市民公開講座も同時開催を予定しています。
金沢は見どころの多い観光都市です。学会場は金沢城公園に隣接し、抜群のロケーションを誇ります。学びの合間には気軽に観光に出かけることもできます。新鮮な日本海の幸や加賀野菜などの旬の食材、豊富な地酒など、食の魅力も満載です。皆様お誘い合わせのうえご参加いただき、秋の金沢を存分にご堪能ください。